総織部

織部釉の銅はどう(銅)しよう?②

前回からの続きです。
そのほかの釉薬の添加銅の種類としては、炭酸銅、緑青があります。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

炭酸銅(II)
炭酸銅(II)(たんさんどう に、英: copper(II) carbonate)は、銅の炭酸塩である。単に炭酸銅という時には、2価の銅イオン Cu2+ と炭酸イオン CO32− と水酸化物イオン OH− から成る塩基性炭酸銅を指すことが多い。


塩基性炭酸銅は、2価の銅イオン Cu2+ と炭酸イオン CO32− と水酸化物イオン OH− から成る無機銅塩である。
自然には孔雀石(マラカイト)と藍銅鉱(アズライト)として産する。
孔雀石(マラカイト):炭酸二水酸化二銅(II)の化学式を Cu2(OH)2CO3 もしくはCuCO3・Cu(OH)2孔雀石(青色の藍銅鉱を伴う)
 
藍銅鉱(アズライト):ビス(炭酸)二水酸化三銅(II) の化学式を Cu3(OH)2(CO3)2 もしくは2CuCO3・Cu(OH)2
藍銅鉱




試験研究用として市販されているものには、孔雀石(マラカイト) Cu2(OH)2CO3・H2O に近い組成を持つものもある。

原料屋さんによっては孔雀石も扱われているところも在りますよね。


緑青
銅は経年変化し、銅色から徐々に褐色を帯び黒色、緑青色へ変化していきます。
例としては屋根に使われている銅板やお城の屋根、大仏さまなどを見るとわかると思います。



つまり炭酸銅と緑青は、織部釉の添加銅としてほぼ同一素材の原料と考えてよさそうです。
では、酸化銅(Ⅱ)と炭酸銅(Ⅱ)のどちらが織部釉の添加に深みを与えられるのか?

【考察】
①銅が自然界の中で経年変化するを考慮に入れると、酸化銅(Ⅱ)より炭酸銅(Ⅱ)の方が、より自然界で酸化されているような原料に思えます。天然の緑青では微細な金属元素の混合もあるかも。

②重量当たり含有の銅成分量は酸化銅(Ⅱ)99.8%に比べ炭酸銅(Ⅱ)の方が半分以下となっているため、調合時に割合の調整は必要。

③そもそも窯の中での加熱変化により炭酸銅(Ⅱ)は酸化銅(Ⅱ)に変化する。
炭酸銅(Ⅱ)は融点220度で溶融により、酸化銅(II)を生じる。
CuCO3・Cu(OH)2 → 2CuO+CO2+H2O

④酸化銅(Ⅱ)は融点1026度。1050度以上で分解され酸化銅(Ⅰ)になる。

以上のことを検討すると酸化銅(Ⅱ)を中心に釉調合を考えても良いと思われます。


次回 緑青の毒性について?予定。








 

織部釉は緑色の発色のことを言われることが多いと思います。
いわゆる総織部釉だと器全体が緑色になっているものです。

これは灰釉に銅を添加して発色させるのが一般的です。
焼成条件は酸化焼成。一旦還元焼成を経て酸化焼成へ戻すと深みのある緑色が発色されるとされています。

釉薬調合例としては
・天然灰       40~60%      
・陶石もしくは長石  60~40%  
・銅外割7~8%

以上の調合が一般的。単純な調合で素材を吟味した方が深みがある気がします。

このなかで銅添加の原材料について調べたことについて
記していきたいと思います。

釉の原材料としての銅として
・酸化銅
・銅へげ
・炭酸銅
以上の3種類が主な種類。

化学式としては(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

酸化銅(さんかどう、Copper oxide、カッパーオキサイド)は、銅の酸化物である。
組成の違いにより、酸化銅(I)Cu2Oと酸化銅(II)CuO がある。

・酸化銅(I)Cu2O
 化学式 Cu2O で表される銅の酸化物で、赤色ないし赤褐色の結晶または結晶性粉末。
 融点は1232 °Cで、1800 °Cで分解して酸素を失う。
 乾燥空気中で安定であるが湿った空気中では徐々に酸化され酸化銅(II)に変わる。
 天然では赤銅鉱として産出する。赤銅鉱は宝石にも利用される鉱物である。
                                 


 

・酸化銅(II)CuO
 化学式 CuO で表される銅の酸化物で、黒色の粉末。
 水素または一酸化炭素気流中で250 °Cに加熱すると容易に金属銅に還元される。
 天然では黒銅鉱として産出する。
 
 釉薬の着色剤として利用される。
 酸化焼成では青色-緑色に、還元焼成では赤色に発色する。
 



還元焼成で現れる赤色はかつては釉薬中の酸化銅(II)が金属銅に還元されて発色したものと考えられたが、今日では酸化銅(II)が酸化銅(I)に還元されて赤く発色すると考えられている。


現在よく使われている酸化銅は、この酸化銅(Ⅱ)のことが多い。

次回炭酸銅、緑青について予定。
 




                                                                           

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